IQを伸ばす幼児教育ってあるの?
ペリー就学前プロジェクト(ペリー幼稚園プログラム)以外の幼児教育についても知りたいけど、子育てに活かすにはどうすればいいんだろう?
こんな疑問に答えます。
お子さんの成長には、幼児期の教育が大切ですよね。この大事な時期に、どんな教育を受けさせたらいいか迷っているママも多いのではないでしょうか。
この記事では、子どものIQを高めるだけでなく、将来を左右する「非認知能力」も育てる方法で有名な二つの幼児教育プログラム、アベセダリアンプロジェクトとペリー就学前プロジェクトを比較しながら、どんな教育が子どもの能力や将来にいい影響を与えるのかを探ります。
さらに、家でもできる教育のコツもご紹介します。お子さんの明るい未来のための、子供の可能性を最大限に引き出していきましょう。
アベセダリアンプロジェクトの実験内容と効果まとめ
アベセダリアンプロジェクトの概要
アベセダリアンプロジェクトとは1972年から1977年にアメリカのノースカロライナ州で行われた幼児教育プログラムです。平均年齢4.4ヶ月の子供111人を対象に実施されました。
この実験は長期にわたって追跡調査され、子供達12歳、15歳、21歳、30歳、35歳の時にデータを収集しました。
アベセダリアンプロジェクトの実験内容
アベセダリアンプロジェクトは子供が8歳になるまで実施されました。小学校に入るまでの5年間は1日6〜8時間の授業が行われ、クラスは少人数(乳児3人に対し先生1人、5歳児6人に対し先生1人)で行われています。小学校に入学してからの3年間は親との面談を行い家庭学習のカリキュラムを作成し、家庭学習の進め方の指導も行いました。さらに、二週間に一度は学校の先生と親の両方から話を聞いて、橋渡しの役割も果たしています。
その他にも、鉄分を強化された粉ミルク15ヶ月分などの栄養補助食品や紙おむつなども提供されました。
教育プログラムは4つの要素で構成され「アベセダリアンアプローチ」と呼ばれています。
アベセダリアンプロジェクトの効果
教育に関する効果
項目 | アベセダリアンプロジェクトを受けた子供 | 対照グループ |
---|---|---|
14歳〜15歳のIQ | 95 | 90 |
高校を卒業 | 67% | 51% |
大学に通う割合(21歳) | 35% | 14% |
大学を卒業した割合(30歳) | 23% | 6% |
プロジェクトに参加した子供達は14歳〜15歳のIQ(95対90)が高く、高校を卒業した割合(67%対51%)も高くなっています。また高校卒業後に大学に通う割合(35%対14%)と卒業した割合(23%対6%)についても高い割合を示しています。
健康・経済に関する効果
項目 | アベセダリアンプロジェクトを受けた子供 | 対照グループ |
---|---|---|
うつ病 | 26% | 36% |
喫煙 | 39% | 55% |
過去2年間継続して雇用されている割合(30歳) | 74% | 53% |
プロジェクトに参加した子供は健康面でも良い結果が示されています。うつ病(26%対36%)と喫煙(39%対55%)の割合が共に低くなっています。また、30歳の時点で、過去2年間に一貫して雇用されていた人の割合(74%対53%)も高くなっていました。
アベセダリアンプロジェクトとペリー就学前プロジェクトの違いを比較
幼児教育でよく取り上げられるペリー就学前プロジェクトとアベセダリアンプロジェクトについて比較してみます。ペリー就学前プロジェクトに関しては知りたい方は【非認知能力を高める幼児教育】ペリー就学前プロジェクトの内容と効果まとめ【関連本も紹介】にまとめてあるので参考にしてください。
実験内容の違いを比較
項目 | アベセダリアンプロジェクト | ペリー就学前プロジェクト |
---|---|---|
開始年齢 | 平均4.4ヶ月 | 3歳〜4歳 |
子供の教育期間 | 5年間 | 2年間 |
授業時間 | 6~8時間 | 2時間半 |
生徒と先生の割合 | 乳児 3:1 → 5歳 6:1 | 6:1 |
親への支援 | 小学校入学後の3年間 | 週に1回90分(2年間) |
プログラムの特徴 | 言語を重視 | 自主性を重視 |
上記の表からアベセダリアンプロジェクトでは開始年齢、子供の教育期間、授業時間、生徒と先生の割合から、ペリー就学前プロジェクトよりも徹底されていることがわかります。
双方に共通しているのは子供だけでなく親への支援も行なっている点です。
IQの違いを比較
項目 | アベセダリアンプロジェクト | ペリー就学前プロジェクト | ||
---|---|---|---|---|
参加したグループ | 対照グループ | 参加したグループ | 対照グループ | |
3歳のIQ | 101 | 84 | 96 | 83 |
4歳半のIQ | 101 | 91 | 95 | 84 |
14歳〜15歳のIQ | 95 | 90 | 81 | 81 |
3歳と4歳半ではアベセダリアンプロジェクトとペリー就学前プロジェクト双方において、IQが向上していました。しかし、14歳〜15歳の時点でアベセダリアンプロジェクトにはIQの差が見られましたが、ペリー就学前プロジェクトにおいてはIQの差が見られませんでした。
教育に関する項目を比較
項目 | アベセダリアンプロジェクト | ペリー就学前プロジェクト | ||
---|---|---|---|---|
参加したグループ | 対照グループ | 参加したグループ | 対照グループ | |
高校を卒業 | 67% | 51% | 66% | 45% |
大学に通う割合 | 36% | 13% | 9% | 5% |
留年 | 34% | 65% | 15% | 20% |
特別支援教育の対象者 | 31% | 49% | 37% | 50% |
アベセダリアンプロジェクトとペリー就学前プロジェクト双方において高校の卒業した割合、大学に通う割合、留年の割合のすべての項目で良い結果を示しています。また特別支援教育の対象者においても双方で低くなっています。
健康に関する項目を比較
項目 | アベセダリアンプロジェクト | ペリー就学前プロジェクト | ||
---|---|---|---|---|
参加したグループ | 対照グループ | 参加したグループ | 対照グループ | |
喫煙 | 39% | 55% | 42% | 55% |
アベセダリアンプロジェクトとペリー就学前プロジェクト双方において喫煙率が低くなっています。このことから幼児教育は健康にも影響を及ぼすことがわかります。
アベセダリアンプロジェクトの比較からわかる幼児教育の効果と子育てに活用する方法
幼児教育が非認知能力が伸ばす
アベセダリアンプロジェクトとペリー就学前プロジェクトの双方において、プロジェクトに参加した子供の高校を卒業した割合や大学に通う割合が高くなっています。アベセダリアンプロジェクトではIQが高くなっているので差が出る理由を説明できますが、ペリー就学前プロジェクトではIQに差が無いにも関わらず、プロジェクト参加者と非参加者で差が出ました。
なぜIQが同じにも関わらず違いが生じたのでしょうか?
それはプロジェクトに参加した子供達はIQなどの『認知能力』ではなく『非認知能力』が高かったためです。『非認知能力』とは「忍耐性」「意欲」などのIQや学力といった『認知能力』以外の能力を指します。
アベセダリアンプロジェクトに参加した子供達の『非認知能力』も高くなっています。アベセダリアンプロジェクトではプロジェクトに参加した子供のほうが喫煙率が低く、うつ病も少なく健康的でした。『非認知能力』に含まれる「自制心」や「社会的適正」などが教育だけでなく健康面にも影響を与えたためです。
『非認知能力』を伸ばすことで子供の高校・大学卒業率が上がり将来の年収を増やすことができるのです。
自宅でできる幼児教育
幼児教育は自宅でも出来ます。
アベセダリアンプロジェクトやペリー就学前プロジェクトのような大規模なプロジェクトに参加するだけが幼児教育ではありません。何十万円もかかる高価な幼児教材も必要ないです。
幼児教育は机に向かって勉強させることではありません。
アベセダリアンプロジェクトでは言語に重点を置き200種類の遊びを提供しました。ペリー就学前プロジェクトでは子供の自主性を重んじた遊びを中心に行なっています。
どちらプロジェクトも遊びがベースであることを忘れないでください。子供は遊びによって学ぶのです。
でば、どんな遊びをさせれば良いのでしょうか?
アベセダリアンプロジェクトを参考にするなら言語に重点を置くべきでしょう。アベセダリアンプロジェクトでは運動能力に関する遊びの時でも、先生は子供に話しかけ言葉を引き出していました。ペリー就学前プロジェクトを参考にするなら子供の自主性を大事にしてください。遊びの主導権は子供が握ります。親は子供と同じ立場で遊びに参加し、あれこれ口出しはしないようにします。
ノーベル賞を受賞したジェームズヘックマン教授も5歳までの幼児教育が学力に影響すると言っています。子供のためにあなたができることを考えてあげてください。
参考文献
The Carolina Abecedarian Project(https://abc.fpg.unc.edu/)
Campbell, Frances A., and Craig T. Ramey. “Effects of early intervention on intellectual and academic achievement: a follow‐up study of children from low‐income families.” Child development 65.2 (1994): 684-698.